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【成長し続ける企業になるための戦略】 第6回:評価制度:②実践編〜制度が〝名ばかり〟にならないためのルールづくり〜

 

1.期間、日付を決めるだけで社員は行動しやすくなります

評価制度の運用でもっとも大切な事は、査定期間と昇進・昇給と連動した年間スケジュール表を作成することです。スケジュール項目は、①査定期間、②発令日、③異動日、④面談、⑤給与変更月日、⑥新給与支給月日、⑦賞与の査定日、⑧賞与の支給日の8項目。全項目について日付け細かく確定することも大切です。このスケジュール表は全社員にプリントを配るなどして周知させてください。
多くの人間はデットラインが明確に決まっていないと目標に向かって集中して頑張り続けることができません。社員たちにモチベーションを持って業務に取り組んでもらうために、日付をはっきりと決めることが大事なのです。
では①査定期間〜⑧賞与の支給日までの各項目について解説していきましょう。

 

 

 

2.査定期間は一般社員は3ヶ月間、役職者は半年間に設定

〈①査定期間、②発令日、③異動日〉

前の表のとおり、店長の査定期間は半年ごと、一般社員の査定期間は3ヶ月ごととします。役職者とりわけ店長については前回述べた通り毎月のランキングを発表し、半年間の累計ポイント数の多い店長が課長に、下位の店長が課長代理となります。なおエリアマネジャーについても同様の評価項目での査定となりますが、ランキングは中期計画で作成した組織図(コラム第1回を参照)どおりの人員が揃ってから実施するのがいいでしょう。また一般社員については3ヶ月ごとに店長とエリアマネージャーから推薦された社員が昇進します。
一般社員と役職者の査定期間が異なりますが、これは〝評価制度を意識しつづけさせるために最適な期間〟として設定しています。一般社員にとって結果が出るのが1年に1回や半年ごとだと長すぎて途中でダレてしまうんです。3ヶ月間だと「今期は頑張って昇進しよう」というモチベーションを最後まで保ち続けられるから結果が出やすいですね。一方で役職者の評価では売上げなどの業績が大きなウエイトを占める。3ヶ月間だと不測の要因で業績が左右した場合にリカバリーできないまま査定期間が終わってしまうなど、実力がきちんと反映されないケースが出てしまうため半年間としています。
こうした結果は②発令日に行うと決めて、必ずその日のうちに社員全員に周知できるようなかたちで辞令を渡します。③異動日は昇進した社員がその役職に就く日付で、⑤給与変更月日と連動させます。引き継ぎなどガあることを考慮して、②発令日から3週間程度期間を受けたことが望ましいでしょう。

 

3.面談は評価するためではなくフィードバックのために実施します

〈④面談〉

④面談は、役職者については年に1回一般社員については年に4回は実施します。実施のタイミングについては役職者については1年の初め、一般社員については②発令日の前に行うのが良いでしょう。
ここでの面談は評価をするための面談ではありません。一般社員の面談では「昇進の推薦をするためには、次の査定までの3ヶ月間にこういうことを頑張ってほしい」と評価をフィードバックをすることが第一の目的。推薦制度の場合、このフィードバックをしないと一般社員たちは何を頑張れば昇進できるかがわかりません。そうなると上司が望むレベルアップにつながらなくなってしまうわけです。なお、この面談は店長とエリアマネジャーが2人一組でおこなうことを強くお勧めします。店長1人ですと正しくフィードバックができず、結果として部下が悩んでしまうことがあるからです。

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3-1.社長面接では社員の「愚痴」に耳を傾けましょう

評価のスケジュール表にある面談とは別に、社長は年に1回は社員と一対一の面談をやってほしいものです。「社長が好きだからこの会社にいる」という社員が多いのが外食企業の特徴。社長とのコミュニケーションの機会は社員にとって大きな励みになるのです。
この面談ですべきことは、社員の愚痴をきいてあげること。そして社員の毎日の頑張りを労い、社長から直接に感謝を伝えることです。現場の業務に関するフィードバックや注意はマネジャーなど上司の役割と割り切りましょう。
外食企業は他のサラリーマンと異なり、仕事の終わる時間が遅く、シフト制だから休みもバラバラ。そのため気の合う同僚と飲みに行って愚痴を言い合う機会が少ないもの。「不満を社長が聞いてくれた」というだけで、社員の気分はかなり軽くなるものですし。

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4.些細な誤解で勝手にESを下げられてはもったいない

〈⑤給与変更月日、⑥新給与支給月日〉

⑤給与変更月日、⑥新給与支給月日は、社員に周知しておくためのもの。たとえば5月に支払われた給料は「4月分の給料」ですよね。ところが「5月から給与が変わりますよ」と言ったときに、5月支払いから変わると思い込む社員が非常に多い。もちろん社員の単なる勘違いなのですが、それがきっかけでせっかくの昇給に対する満足度を下げてしまうケースが多い。会社としては、昇給することで社員の貢献度が高まることを期待しているわけですから、こうした心理的なすれ違いが生じないようにすることが得策です。

 

 

5.賞与は何が何でも出しましょう

〈⑦賞与の査定日、⑧賞与の支給日〉

⑦賞与の査定期間、⑧賞与の支給日も、欠かさずに明記します。賞与は本来「業績次第」のものではありますが、当社は業績に関係なく賞与を年2回支給することを強く勧めています。それこそ、最低保証額を雇用契約書に明記するようにとすら言っているほどです。
その狙いは社内ブランディングで、社員の定着率向上や採用率向上につながるポイントになるのです。
金額は1万5000円の会社から基本給2ヶ月分の会社まで財務の事情によって様々ですが、金額の多寡ではなく「どんなときでも賞与を支給する会社」と社内に認知されることが大切なのです。また、賞与額については半年間の各店の業績(売上げ、利益率)によって差をつける程度で十分です。
今も中小の外食企業は賞与を出さないというイメージが強くありますから、かえって効果の高い人事施策になるわけです。

 

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5-1.支給日ひとつで社長の「社員への想い」は届かなくなってしまう

⑧賞与支給日の話をすると、ほとんどの社長さんは「そこまでしなくていいだろう」と言います。経営者にとって大したことではないように思えることでも、支給日を決めて守ることが社員たちの信用を守ることにつながるのです。ある外食企業の事例をご紹介しましょう。
その会社は過去10年間ずっと夏と冬に賞与を支給し続けていました。ただ1度だけ業績不振のために支給できなかったことがあったのですが、それ以外はなんとか賞与を捻出しつづけていました。社長の苦労はじゅうぶん想像できます。ところがです。ボーナス時期の社員たちは、ボーナスが出ることの期待や感謝ではなく、「今年はボーナスが出るかどうかわからないな」という不安だったのです。
原因はたった1回ボーナスを出せなかったことに加えて、支給日が定まっていなかったことも大きかったんです。いつもらえるかわからないので、去年支給された日を過ぎてもボーナスが給付されないといった時に「今年は出ないのでは」とネガティブな感情に傾いてしまったわけです。このようなことで士気が下がってしまうのが一般社員たちの心情なのだということに気づかない経営幹部が思いのほか多い。これら現場のモチベーションを少しでも下げかねない要因に、細やかに対応していくことが人事に求められる大事な業務のひとつなのです。

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6.3ヶ月の査定ごとに一般社員から最低1人は昇進させます

評価スケジュールの作り方に続いて、運用ルールのポイントをご説明します。
まず一般社員の昇給・昇進ですが、前述したとおりあらかじめ決められた発令日を守ること。もうひとつは必ず1人以上を昇進させることです。平社員の等級が3級から2級に上がる程度から、副店長が店長になるというものまで、一般社員の誰かを必ず昇進させるのです。
この狙いは、「次の査定では誰が昇進するんだろう」という昇進を前提にしたマインドを一般社員全員に持たせること。定期的に1人ずつ上のランクに上がっていくというのが「当たり前」になっている環境をつくることで、社員たちが「いつかは自分が昇進する順番が来る。そのときまでにきちんとスキルを身につけておかないといけないな」と準備の意識が芽生えてくるようになるのです。反面、もし昇進者が出ない時があると、社員たちは昇進・昇給を〝自分ごと〟として意識しなくなってしまい、制度の効力が薄れてしまいます。評価制度をワークさせるために、このような仕組みづくりが欠かせません。

 

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6-1.1店1役職者ルールを守りましょう

一般社員の昇進で注意すべき点として、1つの店舗内1役職者をルールとすべきです。というのも、同一店舗内で副店長の下の役職である主任の役職について「複数人いてもよい」とした外食企業で、主任ばかりが増えて副店長以上への昇進者が出てこなくなってしまったというケースがあります。
評価制度にせよ組織図にせよベースとなるのは、安定的に店長とエリアマネジャーを輩出する仕組みづくり。それが安定した店舗展開の礎となるのです。評価制度の機能不全に陥ることを避けるためにも、1つの店舗には各々の役職者がひとりずつという体制をルール化したほうがよいでしょう。また各役職者が1店1人をルール化することによって、社員の昇進を推薦するときに、勤務店舗の異動を交渉することが自然にできるという利点もあります。

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7.店長へ昇格について

当社の人事設計では副店長と言う役職を作っておき、新しい店長は必ず副店長食の社員から選ぶというシステムにしています。これは新規出店のたびに「次の店長は自分の番かもしれない」という気持ちを副店長全員に持ってもらうことが狙いです。いわば「順番待ち」の状態なわけですが、そうした気分が〝店長になる覚悟〟を醸成させるわけです。
そうした覚悟が必要なのはなぜか?意外に思われるかもしれませんが、社員の9割が「店長になりたい」なんて思ってなんかいないんです。店長は目標となる役職などではなく〝いちばん大変な中間管理職〟と思われているのです。
もし店長を誰もが憧れる役職するには、驚くような額の給与を設定する以外に方法はなく、それは非現実的です。そこで、店長予備群としての副店長職を設けて「いつ自分が推薦されても不思議ではない」と意識させておくのです。

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7-1.注意!抜擢人事は弊害の方が多い

先ほど述べたように一般社員の大半が店長になりたいなんて思っていないというのが真理です。ところが外食業界では抜擢人事が社員のモチベーションを刺激すると思っている経営者が多いんですね。しかし、それは抜擢された社員と引き上げた上司だけが盛り上がっているだけ。他の社員はシラけているのが実情で、実際は1ミリもモチベーションは上がっていません。
また人事のプロから言わせていただけると、抜擢人事は評価制度の仕組みを無視して行われることになるので、公平感が損なわれてしまうという弊害のほうを重くみています。社員に「形ばかりの評価制度」と信頼を失ってしまえば、従業員満足度も下がり、評価されることに喜びを感じられなくなってしまいます。長い目でみると、安定的な出店戦略の妨げになりかねないのです。

 

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8.店長評価のランキングは単月、累計を毎月発表する

次に役職者(店長、エリアマネジャー)の運用ルールについてお話しします。
店長は前にも述べましたように「課長」と「課長代理」の二階層にわけて序列をつくり、半年間のポイントを競って上位が課長に、下位が課長代理となります。この2つの人数配分ですが、課長はプレミアム感を感じられるように、課長代理よりも少なく設定することがポイントです。
ランキングは表のように単月のランキングと平均の2つを毎月発表します。これを6ヶ月間続けてランキング上位の店長が課長、下位が課長代理になります。
「最終的には平均ポイントのみで決めるのに、単月ランキングの発表をするのはなぜ?」と思う人もいますよね。この狙いは下位クラスの店長にもスポットが当たるチャンスをつくるため。単月ランキングであれば、累計では下位の店長も頑張り次第でトップスリーに入る可能性が高くなる。単月でも上位ランキングになれば周りから「今月は頑張ったじゃないか」と称賛されます。その一言が〝次も上位をめざすぞ〟というモチベーションにつながるのです。こうした〝褒められるきっかけ〟をあちこちにちりばめているかどうかで、社員を活性化できる評価制度なのか、そうでないかが分かれるのです。
店長のランキングは1位から最下位まで全店長のランキングを店長会議などで全員の前で発表します。そこで上位になる誇らしさ、下位になる恥ずかしさを経験させて彼らの競争心を刺激するわけです。これをきちんと実施している顧問先企業では、それまで目立ってなかった店長が突然頭角を現すというケースがよく起きるようになっています。

 

9.降格人事はあくまでも〝特殊なケース〟であるべき

店長たちをランキング形式で競争させる形式を採用していますが、これはあくまでも店のレベルアップを実現するため。ですから、エリアマネジャーから店長へ、店長から副店長へといった下の役職への降格や入れ替えは〝特殊なケース〟であると考えて個別対応していくのが妥当です。安易に降格させやすい評価制度で、降格事例もたびたびあるようでは、社員たちを萎縮させてしまいかねません。
通常の降格ラインは「売上げ前年比が80%を切る状況が半年続く」などの通常ではありえない設定で問題なく、社員には懲戒的な場合を除いて降格を意識しない環境づくりが望ましいですね。
降格人事を検討すべき状況になったときに本部が注意しなければいけないことは〝代役が務まる人材が育っているかどうか〟です。そうでなければ、店長の実力アップをサポートしていく施策を考えた方が得策です。また、能力のある部下が揃っているのに、店長が振るわないような状況になった時は、業績による降格ラインを厳しくするなどの対応を考える必要があります。

 

10.不測の事案は必ず相談を

人事制度全体に言えることですが、ルールの変更を余儀なくされるようなイレギュラーな事案というのは必ずおこります。
たとえば有能な人材が応募してきたが、中途採用の役職は最高でも副店長(月給28万円)からという社内ルールに納得いかず「役職は店長、月給は30万円以上でないと入社したくない」と要求してくる。有能な一般社員が「給料が安いから退職したい」といってくる。これらのような駆け引きをしなければならないケースは結構頻繁に起こるものです。
そうした事案が発生した場合は、その都度人事コンサルタントに相談すべきです。またそうした時に最適な対応策をアドバイスできるコンサルタントが優秀なコンサルタントであるといえます。
ところがコンサルタントに相談をせずに判断してしまうケースが多い。もちろん社長の判断です。
特例を認めてしまえば、頑張っている社員たちから人事制度に対する信頼を失ってしまう。モチベーションやモラルの低下、ひいては離職増にもつながってしまう。社内の士気の低下は、こうした小さなほころびが1つ、2つと増えていくにしたがって広がり、やがて大きな問題になっていくということがイメージできない社長が存外に多いことに驚きます。社長だから治外法権が許されるのではなく、社長がルールを守る姿を見て、社員がルールの大切さを学ぶのだと肝に銘じてほしいものです。

 

 

次回は「労務管理」についてお話します。

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