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組織戦略

【成長し続ける企業になるための戦略】 第1回:組織図づくりの重要性

1.成長企業になぜ組織図が必要なのか?

当社が外部人事としてコンサルタントを請け負ったら、まず最初に着手するのが「組織図」づくりです。「なぜ組織図なの?」と思われる方も多いかと思いますので、その理由を詳しくお伝えしたいと思います。

当社のいう組織図とは、一般企業で見られるような営業、総務、宣伝といったセクション(部署)とは意味合いが違います。参考図をご覧いただくとわかるように、一般社員>副店長>店長>エリアマネジャーという役職ごとの「階層」のこと。これは経営者や幹部にとっては将来の人事配置図であり、社員たちにとってはステップアップするキャリアの道すじを明確にした未来地図なのです。

 

2.無料体験版でビジョンを数字に落とし込んでいるかを確認しましょう

当社ではコンサルタント契約を結ぶ前に「無料体験版」を用意しています。その中で幹部の方全員にやっていただくワークショップのひとつで、「現在の組織図、今期の売上げ目標、3年後の経営計画を書いてもらう」という課題があります。皆さん気持ちとしては「ビジョンを共有できている」と思っているのですが、実際の数字に落とし込んでみるとスケール感にズレがあることが多いもの。経営計画を例にすると3年後30億円という役員もいれば、100億円という役員もいるということがしばしばあります。30億円と100億円では、「何人店長を育てないといけないのか、いくら売上げ作れる能力をつけなきゃいけないのか」が大きく違ってしまいますよね。そうなると組織のつくりかたも変わってしまいます。

ビジョンは抽象的なものになりがちな面がありますから、めざす店舗数や売上高などの数字も同時に共有することが大切なのです。

 

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2-1.出店を急ぐと、出店が止まる悪循環にはまりやすい

成長フェーズに入った外食企業でありがちなのが、出店を優先するあまりに組織づくりを後回しにしているケースです。人材が十分に育っていない、数が揃っていないのに、良い物件が出ると出店を繰り返す。しばらくすると既存店は社員数が減ってサービス品質が落ちて売上げを落とす、新店も店長の実力不足で思うように売上げが伸びない。やがては立て直しに追われたり、閉店せざるを得なくなり、結局店数は純増しない。社員達は将来に不安を感じて離職率が高くなるという悪循環にはまってしまいやすいのです。

そうならないためには、数年後(当社では3年計画を推奨)に目標とする店舗数、売上高を決めて、そこからエリアマネジャーを何人育てるべきか、店長クラスの社員は何人必要かを導き出しておく必要があります。それが当社のいう組織図なのです。

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3.理念よりも教育よりも、評価(給料)が大切です

無料体験版のワークショップをもうひとつ紹介しますと、社員の人材育成について「評価(給料)、理念、教育の3要素の優先度合いを10点満点で割り振ってもらう」という課題があります。これは点数に多少の違いこそあれ、ほとんどの外食企業が教育>理念>評価(給料)の順に高い比率にしていました。しかし人事という視点から見た優先順位は評価(給料)>理念>教育なのです。この視点は「外部人事」という企業を客観的な立場からアドバイスする立場ならではといえるでしょう。

なぜ、当社が多くの企業幹部の考えとは真逆になってしまうのか?なぜ、評価(給料)>理念>教育なのか?その疑問について私が「262(ニロクニ)の法則」を例に説明すると、ほとんどの外食企業が「なるほど」と納得してくださいます。

 

4.「262(ニロクニ)の法則」

「262の法則」とは、別名「働き蟻の法則」とも呼ばれているもので、働き蟻の2割がよく働き、6割が普通、2割はサボってばかりいるという法則です。これが人間の会社組織でも面白いほど当てはまるのです。

当社では高い成果を出す2割の社員を「甲子園組」、残り8割を「県大会組」と呼んでいますが、大半の外食企業幹部は昇進や昇給といった人事設計をするときに「甲子園組」の社員を基準につくってしまう。実はこれがうまく機能しないそもそもの理由なのです。

というのも、甲子園組の社員は最初から上昇志向がありますから制度なんてなくても、「どうしたら給料上がりますか?」「店長になるためには何すればいいですか?」と自分で聞きに来るし、言われたこと以上の成果を出そうとします。

逆に「県大会組」はというと、「これだけやってるのに給料が上がらない、昇進しない」と影で文句を言うだけで、上司に直談判するなど自分から行動しようとしません。

甲子園組は成功体験がある人が多く、そういう人はごく自然に成功する方法を実践できます。誤解を恐れずに言えば放置しておいても勝手に頑張って成果を上げてくれます。しかし県大会組は成功体験がないため、成功の仕方を知らないし、成功のための目標設定すらできない人が大半なんですね。

つまりうまく機能する組織図とは、能力のある甲子園組ではなく、できない県大会組の社員を見て作るべきなんです。彼らに「こうすれば昇給するよ、昇進するよ」とメリットわかりやすく示し、目標設定しやすい基準をつくることが、機能する組織図の作り方なのです。

262の法則で8割の県大会組のために組織図をつくる大切さがご理解いただけたかと思います。ではなぜ、私が給料>理念>教育という優先順位になるとお話ししたのか。その理由はいくら理念共有を図っても、いくら教育制度を充実させても、8割の県大会組にとってはそうした努力と給料や昇進との結びつきを理解できなければ、理念を実践しよう、積極的に学ぼうとは思わないからです。

5.給料設定は納得感、公平感が大切です

ちなみに、いま言っている評価(給料)とは、給与額(たくさん払えばいい)という意味ではありません。「これができるようになれば、これだけ給料が上がる」という納得感があり、「同じ役職なのに、なぜあいつの方が給料がいいんだ?」といった不公平が生まれない給与設定をすることが重要です。

そのために給与額は役職ごとに統一することが原則で、エリアマネジャーは一律幾ら、店長は一律幾らと設定することが望ましい。社員が「店長になったら給料が幾らになる」と計算しやすいことで、自分で目標設定しやすくなるんですね。

外食企業の一般的な給与額はエリアマネジャーで月40万円以上、店長で月32~40万円、一般社員で25~30万円といったところです。こうした給与体系づくりの難しいところは、「これまでの給与額から下がらないようにする」ところです。このあたりの対応策については「給与設計」の回で詳しくお話ししようと思います。

 

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5-1.給与額の透明化を嫌がる外食企業の実情

外食企業に限らず、「誰がいくら給料をもらっているのか、知られたくない人もいる」と、給与額の明示を嫌がる人もいます。そうした会社は、おそらくこれまでの評価基準がずさんで、上司の感情が査定に入り込んでいるような場合が考えられます。それでは全社員から納得感を得られませんし、当然エンゲージメントも高まりません。

大切なのは「誰がいくらもらっているか?」と疑心暗鬼になる必要のない会社であり、「ポストに応じた給与が確実に支払われる」という安心感のほう。それが人材難に悩まない会社づくりの第一歩なのです。

また10店までのアーリーステージの外食企業にとって必要な給与体系づくりはエリアマネジャーまで。部長職以上まで透明化する必要はないでしょう。中期的視点から見ても部長のポストをいくつも用意しなければならないケースはそうはありません。部長職以上は月50万円以上になる位の言い方でいいでしょう。

 

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6.組織図とはキャリアステップ(階層)を見える化したもの

では具体的な組織図の作り方についてお話しします。ここで主となる階層は「エリアマネジャー」、「店長」、「副店長」、「一般社員」という「階層」です。詳しくは「評価制度」の回で説明しますが、ここでは各ポストと給料設定の考え方について触れておきたいと思います。

7.経営計画どおりエリアマネジャーを揃えることが肝

エリアマネジャーは、何度も申し上げるとおり中長期の経営計画をベースに何人必要かを決め、その計画通りにエリアマネジャーを育てることが次の成長を決めると言っても過言ではありません。

なぜならば4~5店を統括できるエリアマネジャーがいないと、業績不振店が出始めるなど店ごとの売上げもQSCレベルもバラつきが激しくなってしまうからです。そうなると本部は立て直しに奔走せねばならなくなり、出店をストップせざるを得なくなってしまいます。

 

8.店長は2~3段階にランク分けする

店長職は能力別に2~3段階のランクを設定することをお勧めしています。極端な実力主義はお勧めしませんが、やはり店長同士で成績を競い合う環境がないと成長意欲を失ってしまいがちになってしまうからです。

ランクを分ける評価指標は「予算達成率」をお勧めしています。1年や半期ごとに成績を出して、たとえば店長が18人いたら、上位9人がAランク、下位9人がBランクになるといった具合です。

給料も月5万円前後の差をつけると、より競争心が高まるでしょう。3段階に分けた場合は給料差は10万円程度までがいいでしょう。またランクが多すぎてもかえって下位の店長が上位をめざすモチベーションにつながらないこともある。わかりやすさや挑戦しやすさという点も2~3段階が理想ですね。

また、店舗は規模や立地により、売上げも利益も異なります。たとえば月商1000万円を売る大型店と、300万円を売る小規模店では、店長に求められるレベルも業務負荷も違ってきます。それにも関わらず給与額が一律となると、やはり不公平感が生まれやすくなる。そこで店長のランクとは別に月商300万円以上、500万円以上、1000万円以上といった具合に店舗規模ごとに「店舗手当」を設けることもあります。

 

9.副店長を設けると評価の公平性が高まります

「副店長」というポストは、外食企業によって設けていないところも多いと思います。しかし、これを設けることで人事の公平性を保つ上で様々な矛盾を飲み込んでくれるのです。

たとえば経験豊富で能力の高い人材が中途入社してくると、いきなり店長に配属するところがありますが、こうした人事はこれまでコツコツ積み上げてきた既存社員がモチベーションを落とすことにもなります。とりわけ外食企業は実力主義、成果主義を良しとする傾向が強い。

そこで「どんなに実力があっても副店長を経ないと店長になれない」というルールを作っておく。生え抜き社員も中途採用者も一定期間を副店長という立場で、他の副店長たちと競った結果として店長になるのであれば、既存社員も納得できます。

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9-1.社員1人ぶんの余力が持続的な成長を担保します

外食店は1店あたりの社員を1~2人に抑え、アルバイトを中心に店を回すオペレーションを考えている外食企業が多い。しかし昨今の採用事情などを鑑みると20~30坪、月商500万円クラスの店であれば社員3人は置く体制が良いと考えます。常に社員1人ぶんの余力をつくっておけば、いい物件が出たときに既存店の負荷をかけずに出店が可能になります。

また、外食業界に限ったことではないのですが、店舗営業では近年アルバイトスタッフを管理できない社員が増えています。アルバイトは都合の悪いことがあるとすぐに辞めてしまうため、シフト管理などでアルバイトスタッフの言い分にダメと言えないんですね。スタッフ不足のまま営業すれば顧客満足度が下がって売上げがダウンしてしまうし、店長が休日出勤して埋め合わせする労働環境では当然疲弊してしまいます。しかし1人多く社員がいれば、フォローし合えます。

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10.「兼任」による一部社員に負荷のかけ過ぎには注意

中長期計画から逆算して組織づくりをしていない外食企業が大半ですが、そうした会社でどんなことが起こっているかというと、ほぼ100%能力のある社員が複数店の店長を兼任したり、エリアマネジャーと店長を兼任したりしています。そのぶん給料を支払っているのでしょうが、一部の社員に負荷が偏って疲弊しやすい環境はリスクが大きい。万が一、そうした中核社員が調子を落としたり、退職するといったことにでもなれば、その穴埋めは並大抵のことではありません。

それが出店をストップさせ、業績を落とすきっかけになっていくのです。そんな事態に陥らないために欠かせないのが、このような組織づくりなのです。

 

11.短期評価の繰り返しで競争心を刺激する

当社では査定を年4回で実施することを推奨しています。短い期間で昇進、昇給を決める理由は大きく2つあります。

① 競争意識が生まれやすい

「頑張りがすぐに評価につながる」という会社の姿勢を社員に示すことになり、チャレンジしやすい環境になります。周りの人が次々昇進していく環境は「私も」という競争心を生みやすくします。先ほども述べたように県大会組は成功体験に乏しいため、目標に向かって長い期間モチベーションを維持し続けることが苦手です。年4回と短い期間で評価されることで成功体験を積み重ね、甲子園組の意識を芽生えさせることも狙いの一つです。

② 降格もさせやすい

短期間で査定するメリットとしては、降格もさせやすいという点があります。昇進もしやすくが、降格もしやすい、という環境は社員にポストに対する緊張感が生まれますし、降格したとしても3ヵ月後にすぐ次のチャンスがあるので精神的なダメージも小さくできます。

 

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11-1.「店舗用」と「社内用」2つの肩書き(役職名)を用意

当社では「店舗用」と「社内用」2つの肩書き(役職名)を用意することをお勧めしています。というのも、たとえば「店長」は一般の会社では「課長」に相当する責任ある役職なのですが、本人にそうした責任感を持ってもらうことがあります。また、外食店の店長は対外的に見て地位を低く見られがち。店長の社会的なポジションを示すことで自分の仕事に誇りを持てるよう配慮しているわけです。

また店長のときに課長から課長代理へとランクが下がるなど降格になったとしても、店舗スタッフには気づかれないため、心理的負担を軽くできる利点もあります。

 

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次回は、「給与設計」についてお話しします。

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