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コラム

採用戦略

2019.09.26

【成長し続ける企業になるための戦略】
第5回:評価制度:①理論編〜本部が挫折しない、社員も納得する制度設計とは〜

1.成長フェーズで評価制度が必要になる理由

今回は「評価制度」について解説します。採用戦略と同様に今回は「理論編」として評価制度の設計についてお話しし、「実践編」となる次回ではスムーズに運用・浸透させるためのルールについて説明していく予定です。

さて、なぜ評価制度が必要になるのか?それは社員が多くなってくると「誰を昇進させて、誰の給料を上げるか」を決める時の根拠となるものが必要になってくるからです。社員が公平に評価されていると納得できるものがないと、経営幹部は社員に信頼を得られず、モラルの低下や離職の原因になってしまいます。

先ほど「社員が多くなってくると」と述べましたが、店数も社員も少ないうちは評価制度がなくてもたいした問題にはなりません。しかし、出店スピードを加速させる成長フェーズに入ると、採用する社員数も一気に増えます。彼らをマネジメントし、組織を機能させる基礎になってくるのが評価制度なのです。

しかしながら、評価制度をつくっていない、あるいは評価制度をつくっていても運用できずに悩んでいるアーリーステージの外食企業が多いのが現状です。そうなると社員がなかなか定着しなかったり、スキルも上がらなくなります。そして思うように出店が進まなかったり、既存店の売上げを伸ばせないなど経営面にも影響が出てしまうわけです。

 

2.「悪しき完璧主義」が機能しない評価制度をつくる

評価制度をつくったのに運用できない理由で多いのが「評価制度が複雑すぎる」というものです。たとえば「評価項目が多すぎて社員が覚えきれない」、「評価項目を頻繁に変えてしまうために社員が振り回されてしまっている」、「数値化しづらい評価項目を設定してしまい、評価者である上司の業務負担が重くなってしまった」などです。経営者だけでなくコンタルタントも陥りがちなことなのですが、最初から完璧な評価制度をつくろう、すべてを数値化しようとしてしまいがち。人事部に社員の評価だけを業務にする社員を何人も置くことができる大企業ならまだしも、いくつもの業務を抱えながら評価も兼務する中小企業ではできない相談というもの。そうした現状を理解したうえで、「無理なく運用できる」ことを優先すべきだというのが当社の考えです。ポイントは〈1〉評価項目を絞り込む、〈2〉一度決めた評価項目は一定期間変えない、〈3〉数値化できないものは項目に入れない。これらを守るだけで運用しやすさは格段にアップします。

査定は3ヶ月間ごと年に4回を推奨しています。3ヶ月間は結果に向かってモチベーションを維持しやすい期間を考えたときに最適な長さ。査定の期間が半年、1年と長くなってしまうと続かなくなってしまうんです。こうした査定期間の設定も評価制度の運用効果を上げるポイントになります。

 

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2-1.数値化できないものを評価項目に入れないが正解

「能力評価」「行動評価」「理念浸透」を評価項目に盛り込む(または盛り込みたい)外食企業は多いのですが、当社としては必要ないという考えです。理由は単純で、手間がかかって運用が難しくなるからです。

点数化するのが難しく評価する上司によって採点の甘い辛いの差が生まれるから、根拠ある点数がつけられない。公平性を保とうと会議を増やしたり採点工数を増やすと評価に時間がかかるから「今月は忙しくてちゃんと評価できなかった」といい加減な評価が蔓延するなどが起こり、評価制度全体の信頼性を損ねることもあり得るんですね。それにこれらの評価から得られる売上げアップや生産性向上などの成果との関連性も薄い。手間ばかりかかって業績が上がらないのであれば、やる必要がありません。

明確な数字が出るものだけで設計すれば、そうした負担はいっさいなくなるから運用が容易で続けやすい。長く続けば社員たちの浸透しやすく、評価制度にある項目を第一に行動するようになっていくのです。

当社は、ここでお話する評価制度のシステム化を準備しており、ゆくゆくは採点業務を自動化する計画です。これらの業務から上司を解放することで、部下と向き合う時間を増やすことが企業成長に大切だと考えているのです。

 

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3.評価が必要なのは役職者(店長、マネジャー)だけでいい!

ところで、細かな項目を設定した評価制度が必要となるのは店長職以上の役職者(店長、エリアマネジャー)のみ。副店長以下の一般社員は細かな評価項目を設ける必要はなく「店長、エリアマネジャーからの推薦制度」とするだけで十分というのが当社の考えです。

推薦制度のメリットは、店長が部下をマネジメントしやすくなることです。部下の方も上司に貢献することが昇給・昇進につながるとシンプルに考えて行動できます。ただ店長の主観のみとしてしまうと、評価の偏りやパワハラなどにつながる恐れがあります。そこで店長とマネージャーの2人からの推薦を経て、役員会議での承認を経て昇給・昇進が決まるというスキームにします。チェック機能が2段階あることで公平性を担保できるというわけです。

推薦制度のもうひとつのメリットは、大がかりな評価設計が不要ということ。「今後は推薦制度を導入します」と宣言するだけでいい。面白いもので評価される部下たちも「評価ルールが明確になった」と感じて仕事のモチベーションも確実に上がります。

 

4.評価点のランキングを発表して競争心を刺激しよう

では、評価制度の設計方法についてお話しします。

まず大枠としては【図】のように①業績、②QSC、③加点ポイント、④減点ポイント、⑤役員ポイントの5グループを設けます。その合計点をランキング形式で役職ごとに競わせる仕組みとしています。

評価をランキング形式とする目的はもちろん店長たちの「競争心」を刺激すること。アーリーステージの段階の店長以上の役職者たちは、思いのほか他の店のことに興味がなく、横のつながりも薄まっているというケースが多いんです。店長たちに向上心がないと、当然店のレベルが上がらないし、部下も育たなくなってしまいます。ランキング形式を採用することで、絶えずレベルアップをめざす健全な競争環境をつくることができるわけです。

それでは①業績、②QSC、③加点ポイント、④減点ポイント、⑤役員ポイントのそれぞれについて説明していきましょう。

 

5. ①業績、②QSCに最重要項目をまとめる

制度設計の5つのグループのうちで評価の柱となるのは①業績、②QSC。点数配分もこの2つのウエイトをもっとも大きくします。残る3つは調整の役割を担います。

項目の選び方ですが、①業績は売上げやFL、②QSCは覆面調査や衛生検査といった店舗運営の成績に関わるものを項目にします【表】。大切なことは2つの評価項目を合わせて6項目以内に絞り込むこと、そしてシンプルな数字で表せる項目を設定することです。先ほども述べたように項目が多すぎると覚えきれなくなって実行しなくなりがちです。全項目を頭に入れて行動できることを考えると6項目が上限だと考えます。

何を評価項目とすべきかという問いについては、当社としては「数値化が容易で、レベルアップすると売上げに直結するものなら何でもいい」としています。それこそトイレ掃除でも売上げが上がるのなら項目に入れてもいい。

項目の設定で注意すべきことは、数字データをそのまま点数とするのではなく、必ず予算を100とした「%(率)」で点数化することです。ありがちな例でいうと「売上げ」や「利益」をそのまま「額」で評価する経営者が多いんですね。しかし売上げ額や利益額の多寡は店の規模や立地によるところが大きく、「額」のままでは公平に店長の力量を評価できません。すべての項目で最適な予算を算出し、その達成率または差異から評価点を導くようにしましょう。

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5-1.評価制度がシンプルだと売上げが上がる!?

シンプルで公平な評価制度で売上げが上がる理由は簡単で、役職者にとって何を頑張ったら評価されるかがわかりやすいから。評価制度で設定する項目は役職者に「何を頑張ってほしいか」を伝えるメッセージなわけです。それを行動してもらうには、役職者の頭に常に入れてなければいけない。多すぎると集中できなかったり、覚えきれなかったりして成果につながらなくなるんです。項目を絞り込むと集中できるから成果が出やすくなる。成果が出れば社員の評価制度に対する信頼が高まり、より忠実に守ろうとする。そうした好循環が生まれるのです。

実際、当社の評価制度を導入したことで売上げが10%近くもアップしたという外食企業が多くあります。

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6.規律に関わる評価は③加点ポイント、④減点ポイントに集約

③加点ポイント、④減点ポイントは、売上げや顧客満足に直接的な影響がないものの、店舗スタッフの規律や勤務態度に関わるものが主な項目になります。

たとえば③加点ポイントでいえば紹介による社員やアルバイトの入社、本部施策の実施、社内研修の参加といった会社としてプラスとなる行動についてポイントを付与します。

④減点ポイントは逆で、本部として更生させたいことを項目に入れます。店舗スタッフ全員を対象とした遅刻回数、提出書類の遅れ、部下の短期間の離職などです。たとえば売上げではトップクラスでも、離職者が多いとなると減点ポイントが働いてランキングの上位にいけなくなるわけです。

こちらも項目数の上限を決めていて【表】のように③加点ポイント、④減点ポイントそれぞれ5つ、また点数は10〜-10ポイントとしています。これは評価制度の重要度が必ず①業績、②QSCになるようにするため、そしてここでも社員にとっても評価者にとっても負担にならない数に留めることが制度運用に欠かせないからです。

また③加点ポイント、④減点ポイントでも数値化が容易なものであることが必須です。

7.「えこひいき」も評価のひとつ!?

⑤役員ポイントの狙いは、どうしても昇格させたい社員がいるものの①〜④の合計点だけではわずかに届かないといった場合に活用するためのものです。評価の基準は社長の主観。要するに「えこひいき」(笑)なわけですが、①〜④の評価項目を評価者の主観が反映されないものばかりで占めているので、制度全体として行き過ぎたえこひいきができない設計になっています。

社長も人間ですから実際の能力にかかわらず特定の社員を昇格させたいということはよくある話。たとえば昇格するために必要な点数があと数ポイント足りないというならまだしも、二桁以上不足しているような時に「そこまでして彼(彼女)を今回昇格させるべきか?」と理性的な判断を社長に迫られるわけです。こうした局面で、社長がえこひいきしたい社員の本来の実力を見つめ直すいいきっかけにもなるといえます。

 

8.評価ポイントは基準点からの差異や達成率で数値化する

続いて各評価項目の点数設定方法について説明します。

評価の柱である①業績、②QSCの採点表は【表】のようになります。すべての項目について評価基準となる「予算(表1の①)」をそれぞれ設定し、それらに対する差異または達成率の数値から「評価ポイント(表1の③)」を配分した点数表を作成します。加えて①と②の全項目で100%となる「ウエイト率(表1の②)」を設定し、「評価ポイント×ウエイト率=獲得ポイント」という計算式にします。たとえば、売上げ予算1000万円に対して結果が990万円だとしたら達成率99%ですから130ポイントでウエイト率が30%だから獲得ポイントが39ポイント、LINE会員獲得の目標(予算)50人に対して結果が60人だとしたら差異が+10人ですから110ポイントでウエイト率が10%だから11ポイントとなります。この2つは各項目0〜150ポイントで合計すると最高で900ポイント、獲得ポイントでは最高151ポイントとなりますが、獲得ポイントの合計点がいくつでもランキングの上位者が評価される仕組みなので問題ありません。ただ全6項目でポイントを揃えておいたほうがウエイト率を変更したときに機能しやすくなります。

③加点ポイント、④減点ポイントの2つは「できたこと」「違反したこと」に加点または減点していきます。そして⑤役員ポイントはすでに述べたように社長の裁量で加点できるもの。当然ここの点数が大きくなるほど評価制度の公平性が崩れていく性質のものですから、「できる限り付与しない」という姿勢が正解です。

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8-1.なぜウエイト率が必要なのか?

①業績、②QSCの2項目の点数計算が「評価ポイント×ウエイト率=獲得ポイント」となっていますが、なぜ「ウエイト率」という変数が必要なのか、説明します。

経営者になると実感してらっしゃると思いますが、その時々の経営状況や店舗運営の状況で重視すべきポイントが変わっていくものです。しかし、そうした社長の思惑をそのまま評価制度に反映させて、評価項目そのものを毎月のように入れ替えるなどしてしまうと現場の社員たちにとってストレスになり、パフォーマンスを落とすケースがあるのです。その点、項目を変えずに配点比率を変える程度であれば、すんなり受け入れられます。そうした経営サイドの思惑と現場社員のパフォーマンスのバランスをとる役割がウエイト率なのです。

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9.数値設定のコツはそれぞれの点数に差が出ることがポイント

各項目の数値設定のコツをお教えしましょう。

数値設定について大事なポイントとなるのは1人ひとりの点数に差が出るようにすることです。当社の評価はランキング形式ですから、同じ点数の社員がかたまってしまうと社員たちの競争心に火がつきにくくなってしまいます。当社では、全員の各項目ごとの最大値と最小値のレンジ、そして平均値を算出して数値設定していきます。「売上げ」の項目を例にすると、全店の予算達成率の平均が97%で最大値が95%、最小値が90%であれば、1%刻みに数値設定してポイントに差が出るようにするといった具合です。売上げや利益率、覆面調査などは平均点、原価や人件費は30%や28%などあらかじめ設定した標準値を中央値(100ポイント)として、上下の値を設定していく手順になります。

この数値配分の最適解を最初から導き出すのはほぼ不可能で、導入初期のころは査定月ごとに数値調整を繰り返して最適値を探っていくことになります。

 

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9-1.評価数値をオープンにして役職者の自己管理力を促す

この評価設計は点数配分を含めて社員に公開します。つまり自分で「今月は何点になりそうか」を計算できるわけです。自分で計算できれば「残り2週間でここを改善しないといけないな」といった改善を自分でできるようになります。そうした自主的な管理ができるようになれば店長・マネジャーとして自然とレベルアップしていきます。

だからといって評価制度がすぐに浸透するかというと、そうでもないのが現実です。毎月ランキングを発表するのも、評価制度の浸透を促す狙いがあるのです。

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次回は評価制度の「実践編」として、運用のポイントを解説します。

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