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COLUMN

コラム

組織戦略

2019.07.19

【成長し続ける企業になるための戦略】
第2回:平等感ある給与設計の仕方

1.なぜ給与を「設計」しないといけないのか?

第1回の「組織図」の時にも申し上げましたが、外食企業が安定的に成長していくために不可欠なことは、店長そしてエリアマネジャーといった「管理職」人材を厚くすることです。この層が厚いから新規店を早期に軌道に乗せやすくなるのですし、新規店に人材を割かれた既存店もサービス低下を防ぐことができる。すなわち会社全体の収益力が高まるわけです。

組織図はそうした「管理職」へのステップを一段一段階段を昇るように社員に示した「地図」の役割を担っているわけです。そして社員たちがステップアップすることで得られる「メリット」となるものが「昇給(給与)」となります。

とりわけ、最近の若い世代は責任ある立場になることを嫌うタイプが増えていますから責任に対する対価(昇給)を明示する必要があります。社員には最初に地図とメリットを合わせて示すことで、キャリアアップの意識を方向づけてあげることが大切なのです。

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1-1.未来から逆算した人事戦略こそ成功の方程式

店舗数が増え、社員数が増え始めると社長の悩みのタネになるのが「給与」です。というのも、ほとんどの外食企業が社員ごとに給料がバラバラなんですね。同じ店長で業績も同じくらいなのに給料が違っていたり、店長よりも低い役職の料理人の方が給料が高いというケースが多いんです。

スタートアップ時の外食企業が中途採用をするさいに「前職で得ていた給料」をベースに各人の給料を決めるケースが多い。そうすると当然給料はバラバラになってしまいます。創業間もなくはそうした状況でも経営幹部と社員が密接にコミュニケーションをとるなどしてフォローできますが、店数も社員数も増えていく中でフォローが行き届かなくなってしまう時が必ずやってきます。そうなってから慌てて給与設計に着手しても、新たな不安要素が吹き出すなど落ち着くまでに時間がかかるし人材も流出しやすくなってしまいます。

3年後、5年後といった中期計画をしっかりと立て、そこから逆算して組織と給与を設計している企業と、勢いに任せて拡大を進めている企業との差は、組織と給与という人事戦略をしていたかどうかで明暗が分かれるのです。

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2.給与設計の基本「基本給」「固定給」「総支給」

給与については「固定給」と「手当」の2つに分けます。2つの意味合いの違いについて私は、固定給は実際の仕事に対して支払われる「評価」、手当は会社に勤めることで社員が得られる「権利」であると、私は説明しています。

固定給をそのまま基本給としてしまう外食企業も少なくありません。しかし当社では固定給を基本給、役職給、職能給の3つに分けて設計することをお勧めしています。そして役職給と職能給が上がっていくイメージです。その理由は・・・・。コンサルティングさせていただく外食企業によって給料に込める狙いは様々なので・・・ですが。

手当は福利厚生の意味合いが強いため、ここの充実度が採用活動に関わってきます。「住宅手当」「家族手当」の3つはマストで入れておきましょう。その他、「資格手当」「調理師手当」なども一般的です。

 

3.給与設計とは社内ブランディングである

役職給の金額をはっきりさせることで社員は「店長になったら幾ら、エリアマネジャーになったら幾ら給料が増える」と計算できます。同じ役職には一律の金額を設定することで会社が全社員を平等に評価しようとしている姿勢を理解できるようになります。そして順調に店数が増えていっている状況であれば「自分もこの会社で2~3年頑張れば店長になれるチャンスがある」という気持ちが生まれ、目標に向かってモチベーション高く取り組めるようになります。

ところで役職が上がるごとの給料がわからない状況だとどうでしょうか。第1回で説明したような県大会組マインドの社員たちは「いくらもらえるのかわからないのに責任ばかり押しつけられる」という気持ちになりやすく、モチベーションアップにつながらなくなってしまいます。同じ役職でも社員によって給料が異なる場合は、社員はその金額差に「えこひいき」など会社への不信感を芽生えさせるきっかけとなってしまいます。

すなわち給与をわかりやすく設計し、社員にわかりやすく示すことで社員のエンゲージメントを高める社内ブランディングになるのです。当然、この給与設計は後の回で詳しく解説する採用活動時の情報誌掲載や面接でも欠かせない役割を果たします。それだけに限られた人件費予算の中でいかに多くの社員からポジティブに感じてもらえる給与設計をするかが大切なのです。

 

4.給与額設定の前に一般的な給与相場は押さえておきましょう

ほとんどの会社が外食業界の給与の相場観から算出しているかと思いますが、いまは業界の垣根を越えて人材の争奪戦になっています。とくに外食業界は不人気業界なので、給与額の設定を誤って採用に苦しむことがないように注意しましょう。一例として役職別給与額のモデルケースを掲載しますので参考にしてください。

まず新卒ですが、積極的に採用活動に取り組む企業は初任給で25万円をお勧めしています。というもの、あらゆる業種を見ても新卒採用に力を入れている中小企業の初任給のスタンダードが25万円なのです。

そして店長の給与額は35万円前後に設定することをお勧めしています。35万円は一般企業の課長職給与の最低ラインです。店長は、外食企業に入った社員が最初に目標とする役職ですから、「苦労して店長になっても、他業種と比べて見劣りする」と思われるような額ではモチベーションを維持できません。何度も言うように、成長フェーズに欠かせないのは店長、エリアマネジャーの早期育成ですから、社員の目指し甲斐のある給与額を提示したいものです。

また店長は売上げ規模や実績を加味した2ランクに分けて競争心を刺激させますが、金額差としては3万円前後をお勧めしています。というのも業績によっては降格もあり得るわけです。降格で5万円を超える減給となると次の査定でリベンジを目指す意欲より、モチベーションダウンが上回ってしまうリスクが高くなってしまいます。そうした心理的な許容範囲を考えながらランクを設定しましょう。

そしてエリアマネジャーは40万円前後、部長は45万円以上といったところです。

さて、話を少し戻してボリュームゾーンとなる新卒から店長までの一般社員の給与設計について考えてみましょう。ここは新卒入社で2年め~の社員や、中途採用の社員が含まれるわけですが、中途採用の給与設定では、採用される方もする方も前職の給与額をベースにしがちです。その中でも25万円~35万円未満の幅があれば吸収しやすいと考えます。前回も述べましたがいくら優秀な人材でも最初から店長として中途採用するのは御法度。こうした抜擢人事ほど、他の社員に不平等感を与えるものはありません。副店長職を設定し、店長に昇格するのは副店長からというルールを徹底する。そうしたワンクッションがあることで、優秀人材を副店長で採用しても他の社員たちの不平等感を吸収することができるのです。その副店長の給与額ですが、30万円前後が妥当なラインになってきます。

 

5.手当は採用戦略に関わります

手当で最低限入れておかないといけないのは「住宅手当」と「家族手当」の2つ。その理由は、採用戦略の回でも説明しますが、どの求人サイトの絞り込み条件にも必ずある代表的な手当だからです。この2つを外してしまうと、みすみす応募者の数を減らしてしまうことになりかねませんから気をつけてください。

その他の手当としてはソムリエや調理師免許といった業務に必要な資格を取得している者に支給する「資格手当」、勤続年数に応じて支給する「勤続手当」、勤務地に近いエリアに引っ越した者に支給する「引越手当」などがありますが、企業ごとに打ち出したい特色を強調するために手当を設定することをお勧めしています。

6.私がインセンティブ制度をお勧めしない理由

外食企業では「インセンティブ」制度をもうけているところが少なくありません。売上げ予算を超えたぶんに応じて利益を還元するものであったり、小さなものではドリンク注文を受ける杯数に応じてインセンティブをつけるところもあります。しかし当社としてはこうしたインセンティブ制度をお勧めしていません。

そもそも店舗展開をスピードアップさせたい外食企業にとって求める人材は、1店の売上げの最大化じゃなくて店長やエリアマネジャーといった管理職をめざす社員なんです。「役職が上がらなくても、インセンティブで稼ぐほうがてっとり早い」と思われてしまったら本末転倒。インセンティブ制度は個人の営業成績に支払う報酬ですが、個人の営業力と管理職に求められる能力は別物なんですね。その意味でも多店化をめざす外食企業に向いていない仕組みなんです。

ただ個人の頑張りを承認する機会がまったくないのも有能な社員のモチベーションを下げてしまいます。そこでインセンティブは年2回の賞与に反映させることをお勧めしています。

 

7.「等級制度」も成長企業には不向き

もうひとつ。インセンティブと同じくらい成長企業に不向きと考える給与制度が「等級制度」です。等級制度は、人事・給与設計の本を開くと必ず登場するほど普及していて、外食企業に限らずたくさんの企業が何の疑問もなく採用しています。

しかし何度も申し上げたとおり、企業の成長にも様々なフェーズがあって、とりわけ成長スピードを加速させたいアーリーステージの段階では、等級制度はそうしたスピード感が実感しづらくさせてしまうんですね。

等級制度が有効となるのは、企業が成長から成熟のフェーズに移った時です。社員数が100人を超え、出店ペースが緩やかになると、どうしても管理職のポストが少なくなって昇進しづらくなってきます。そこで等級制度を導入して昇進、昇給のスピードも緩やかにするわけです。

成長フェーズでは社員の「認められている、昇進している」という承認欲求を満たしながら、早期にエリアマネジャーを任せられる人材を育てるための動機付けが人事・給与戦略の肝となります。それを解決させるのが当社が推奨している店舗役職と社内役職の2つに分けた当社の組織図です。一般社員は新卒入社時こそ3つの等級に分けていますが、その後は店舗役職はリーダーでも一般と主任、副店長は係長、店長は課長代理と課長、エリアマネジャーは次長といった具合に1~2の異なる役職に分かれ、昇進のたびに上司から辞令を手渡します。そしてこうした二層構造が後年、等級制度を導入しやすくしてもいるんです。店舗役職はそのままで、たとえば副店長の係長を3ランクに分けるといった具合にしていけばいい。

多くの外食企業が成熟段階に入ったところで組織と給与を作り直さないといけなくなるのですが、大がかりな組織再編をすると、どうしても理不尽な降格や減給で一部の社員の不満を生んでしまいがちです。そうしたリスクを避けながら事業の規模に合った再編が可能となっているのです。

 

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7-1.等級制度と勤続手当は同じ!?

等級制度が日本の企業に浸透した理由は、おそらく終身雇用制が当たり前だった時代が長かったからだろうと私は考えています。当時は大半の社会人がいちど入社した会社に60才で定年になるまで勤めているのが当たり前だったし、年とともに給料が上がっていくものと誰もが考えていました。それを前提にした場合、緩やかに給料が上がり、役職も上がっていく等級制度は理に叶った制度ではあるんですね。

つまり等級制度は本質的にベースアップの意味合いが強いんです。当社としてはベースアップの部分は「勤続手当」として支給することを推奨していますので、等級制度の運用が本格的になったところで等級制度に一本化していくようにしています。

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8.賞与は給与設計ではなく評価設計

ここまで読んでいただいた読者の方は「賞与について何も語られてない」と思われるかもしれませんが、賞与については評価制度の回で詳しくお話しする予定です。

賞与を「年2回、2ヵ月分」「営業利益の●%から役職ごとに設定した分配率で支払う」などと固定している企業があります。賞与も企業のカラーごとに考え方が様々ですが、当社としては賞与こそ評価の意味合いをつけて個人の能力を称讃する機会にすべきと考えているというのが、その理由です。

 

次回は「採用戦略」についてお話しします

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